◇◇月城一颯◇◇ 夜走

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 それにしても、寒い季節で良かったよ。周りには誰もいない。 陽気が良かったらそれこそヤンキーに絡まれそうだ。 こんなに可愛い子がひとりで酒盛りなんて、彼らにしたら絶好のシュチュエーションだ。 「まだ帰りたくなーい!」 「夕凪ちゃん」  わたしも隣に座り込む。開けられていないビールも缶チューハイもまだまだある。 「わたしも飲んでいいかな?」 「えーと、月城さんですよね? どうして一緒に来てるの? やっぱお兄とつき合ってるんですか?」 「つき合ってないよ」 「そっか。今、〝幸せー!〟 を突きつけられるの、きついからなー」 「わかるな。その感覚」  わたしは近くにあったビールを手に取った。 夕凪ちゃんが、今、幸せな人といるのがきついのなら、わたしなんて最適の人材かもしれない。本当にきつい時に幸せオーラに当たるのが辛いという感覚は充分理解できる。 「いいですよ。飲んでも」 「ありがとう」  わたしは缶ビールのプルトップを開けた。 「おーおー。何やってんだ? お前ら」
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