◇◇月城一颯◇◇ 夜走

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 「二葉のうつ病、わたしのせいなの。家族旅行で、なんかの理由でパパにサービスエリアに入ってもらって、二葉に後部座席の左右を交代してもらったの。そのせいで二葉は、事故した時に、助手席のお母さんの死の瞬間を()の当たりにしちゃったんだよね。わたしが無理に代わってって頼まなかったら、うつ病になんかならなかったよ。その記憶はずっとあったの」 「重い……。月城さん、重すぎる」  頭が朦朧(もうろう)としてきた。体がぐらぐら揺れている。どうしてだろう。わたし、お酒強いはずなのに。 「月城さんっ。月城さんってば。あー寝ちゃったよ、この人」  側頭部に誰かの肩がある。手で誘導されて、優しくもたれ掛けさせてくれている。 え……もしかして夕凪ちゃん? わたしが慰めるはずなのに。村上くんは夕凪ちゃんをわたしに託して、車で待っていてくれているのに。 なんでこんなに眠気が……。 すぐ隣でガサゴソと動いている。 「あー、お兄? 月城さん寝ちゃったよ。迎えにきて」 「え……寝てないよ。……でね、夕凪ちゃんには家族がいる……。仕事中でも五秒で飛び出していくお兄ちゃんがいる……(うらや)ましい」
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