◇◇村上健司◇◇ 根源

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 「副社長宛に郵便です。本人以外開封厳禁になっているので、そのままお渡ししますね」  浅見さんが他社からの郵便物とは別に、俺に開封していない封筒を差し出してきた。封筒の下の方に印字された社名は品川アカデミーだ。 「ありがとう」 浅見さんは副社長室から出ていった。 俺は引き出しからハサミを出して開封する。 品川にしてみれば、月城からの近況報告が曖昧になった。おそらく彼女のマンションにも足を運び、引っ越してしまっている事も確認したんだろう。 もしかしたら、燃えたと嘘をついていた月城の実家にも行ったかもしれない。品川にとって月城は大事な駒だ。その駒が、今は糸の切れた凧状態になっている。 この日がそう遠くないうちにくることは予想していた。 案の定、面会の申し入れだった。 ただ予想していた展開よりも事は簡単に済まないのかもしれない。どうしても、我が社を傘下に取り込みたいらしい。 メールで品川と連絡を取り合い、Canalsまで来てもらうことになった。  昼休み、浅見さんが席を立ったタイミングでさりげなく後を追った。月城はまだパソコンに向かっている。
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