◇◇村上健司◇◇ 根源

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昼飯を食いに行くんだろう。廊下に出たところで浅見さんを呼び止めた。 「浅見さん。悪い、昼休みに」 「なんでしょう?」 俺の方に向き直ってくれる。 「あのさ、応接をとってほしいんだよ。四十二階の」 「四十二階?」 めったに使わないから訝しがるのもわかる。 「そう」 「承知しました。何月何日ですか。相手方は?」  俺はさっき決めた日時と品川アカデミーの名前を口にした。 「じゃ、よろしくね。あとこれは内密にしてほしい」 「了解です」  浅見さんが会釈して遠ざかったところで、のろのろと方向転換した。 軽く髪の毛をかきながら、あの部屋だけは役員が自分で取れるようにしよう、と決める。 相手方までが極秘事項の時にしか使わないわけで、フロアにある応接と違い、被るからって秘書に調整してもらう必要もない。 「副社長」 「えっ!」  目の前に月城がいて驚きの声が漏れる。 席にいることを確認して浅見さんを追ったのに、これだからガラス張りは……。 「叔父が来るんですね?」 「聞いてたんだ? いや、大丈夫だから。月城は何も心配しないで」 「わたしには内緒で叔父と話をしようとしてたんですね?」
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