◇◇村上健司◇◇ 根源

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 その通りだ。目が泳ぎ、ガラス越しに、昼で人の少なくなったオフィスが視界に入る。 「わたし抜きで話をしたって、どうせ叔父のことだから、興信所でもなんでも使って居所を突き止めると思いますよ? それに実家のこともある。わたしが根源なのに、わたしなしで話を進めようとするのは無理です」 「まあ、そうかもしれない……けど……」  できるだけ接触してほしくない。 「一緒に戦わせてください。っていうかCanalsに迷惑をかけてるのはわたしの方なんですから」 「別にこんな買収話はいくらでも切り抜けてきたよ。月城の叔父さんだけじゃない。じゃあ、一緒に応接に入るか?」 「はい」 「だけど約束だぞ? 絶対に向こうの策略にハマらない事。月城の弱みをついてくるに決まってる。弱みを熟知してる相手だ」 「約束します」 「ほんとだぞ? じゃないと許可できない。Canalsに不都合な事でプレッシャーかけられて、〝月城が戻るなら〟とかの条件を出されてもその場でうなずかない、って約束してくれないと連れていけない」
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