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月城は俺にダウンジャケットの入った巨大な紙袋を手渡しする。
立ち上がってそれを受け取り、四人がけテーブルの横の席に置くと、俺もその流れで月城のダウンジャケットが入った紙袋を彼女に手渡す。
そこで店内での恥ずかしいボアキャップも外した。
「俺も同じ事言われてちゃんと確認しなかったんで。っていうか、貴重品には番号札渡すのに、上着は自己申告って雑ですよね」
「ほんとに」
月城は腰掛けようとしない。このまま名刺だけ受け取って、出て行こうとしているのかもしれない。
「外、寒かったでしょ? 何か温かいもの飲んだらどうでしょう? ここまで来てもらったお礼に、俺、奢るんで」
名刺を渡す前に腰掛けさせるぞ。
「そうですね。寒かった。じゃあちょっと飲み物買ってきますね。奢るとか、それは申し訳ないんで」
「いや、電車賃もかかっただろうし。ここは出させてください。何がいいですか?」
俺は立ち上がり、向かいの席に座るよう手で誘導した。
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