◇◇村上健司◇◇ 根源

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 俺が憤怒のあまり口を聞けずにいると、品川が媚びるような声で月城に囁きかける。 「一颯。お前に直接会えないからこんな場で言うしかないが……、わたしたちは一颯が戻るなら、Canalsとの合併は諦めてもいいと思ってるんだよ」 「え……」  始終(うつむ)いていた月城が思わず顔を上げた。  それは嘘だ。騙されるな。うちを手土産にしない提携なんか、東欧塾にはなんのメリットもない。 東欧塾との提携はなくなるぞ。 「村上副社長、方便だとお考えですね? でも違いますよ。一颯が戻ってくるなら本当にCanalsのことはあきらめましょう。東欧塾さんにも、一颯にはCanals以上の価値があるとすぐにわかってもらえるはずです」  なんだとっ?  気づかれないように深呼吸をして怒りを鎮める。俺が勇み立っている場合じゃないのだ。  月城の気持ちが揺れている。 なんだかこの品川って男は気持ちが悪い。目を見ているとおかしな吸引力によってそらせなくなり、あげく、向こうのいいように誘導されそうだ。 俺はあまりにも怒りが強く、気持ちは揺れない。でも、人と何かが違うのはわかる。催眠術かなんかの一種なんだろうか。
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