◇◇村上健司◇◇ 根源

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 「でも、叔父がまたどんな迷惑をかけてくるかわからない、です。東欧塾までバックにつけて」 「東欧塾にはこっちから対応する。Canalsを買われてたまるか。絶対にな」 「だけどこのままじゃ、東欧塾の資金力で本当に買収されてしまうかもしれません」  月城は社内だと敬語だ。当たり前か。 「月城。それで君が戻れば、あいつの思う壺だぞ? あいつ、月城が戻れば買収は思いとどまると言ってた。けど、東欧塾にしたら、Canalsを手土産に持ってない品川ゼミナールなんて価値なしだ。約束違反で提携は反故(ほご)だろう。それでもいいと品川は言ったようなもんだ」 「なんか、東欧塾にもわたしの価値がわかるとか、なんとか言ってませんでした?」 「ハッタリだよ。Canalsの買収ができない代わりに、ハッキング能力の高い社員を連れてきました、なんて言われたって相手にしないよ。東欧塾は犯罪に手を染めるつもりなんかないよ」 「そうですよね」 「品川の本性は〝一颯にはCanals以上の価値がある〟って言葉に集約されてる。つまり東欧塾と提携できなくとも月城がいれば、また違法なハッキングでどこかの会社を買い叩く事ができるってことだ。それをやらせるつもりで月城を欲しがってる。それでいいのか? 自分の人生だぞ?」
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