1343人が本棚に入れています
本棚に追加
「信じてほしい……です。ハッキングで他社の情報を漏洩させようとしたのはCanalsが初めて。叔父さんに、わたしの両親の復讐心を利用されたんです。副社長を、事故の犯人だと思ってたから」
「なあ、月城」
そこで俺は月城の方に体の向きを向けた。ソファの上で互いの膝頭がつきそうだ。
「はい」
「あいつ、おかしくないか? なんか催眠術みたいな妙なもんを感じるんだよ。俺は怒り沸騰してる状態だから、逆に冷静に判断できるけど、あいつの月城を見る目、気味が悪い。懐に潜り込んで無理やり肯定の返事を引き出そうとしてるような」
「…………」
「やっぱりそうだよな? 月城、努めてあいつの目を見ないようにして喋ってた。ずっと俯いてた。おかしいと思ってたんだよ。俺だけが憎いなら、俺の情報をハッキングして流せばいいだけの話だ。それをCanalsの社員の情報を流すことを月城が了承するなんて」
「わたしが弱かった、んです。Canalsの買収に成功すれば、妹をアメリカでの治療プログラムにまた参加させられるから。それだけの資金ができるからって……。了承してしまった……みたいです」
俺は、拳をソファに落としてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!