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「それもほぼ催眠状態に陥らせて、無理に、だったんじゃないのか?」
「実は、よく……覚えてない。経緯はまるで覚えてないんだけど、自分が頷いたことだけは覚えてる。それに二葉を、実際一度はアメリカに連れて行ってくれたの。……くれたんです。たったワンクールのプログラムで、ちょっとだけど、好転したんですよ」
それさえ計算だったんじゃないかと思えてくる。
中途半端に麻薬を与えて麻薬患者にさせるように、月城はこのプログラムを続ければ妹は良くなると、はっきりした希望を見いだした。
夕凪が教えてくれた事柄を思い出す。
月城がこんなにも妹のうつ病に責任を感じているのは、家族旅行で高速の途中のサービスエリアで、後部座席の左右を変わったからだとか?
それは不幸には違いないが、二葉ちゃんがその瞬間、他の場所を見ていたら、母親の死を目の当たりにすることはなかった。世の中の半分以上は偶然で成り立っているといってもいい。
でもこれは、非常にセンシティブな話で、深い事情を知らない、いや知っていたとしてもきっと安易に触れていいことじゃない。
余計に月城を傷つけるのが怖い。
「とにかく、これからも絶対に品川のところに戻るなよ? 戻れば犯罪者になるんだぞ? 人を傷つけることなんて月城にはできない。自分の人生なんだ。人は幸せになるために生きてるんだよ」
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