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事故後の一時的な記憶の錯乱に乗じて、さらにそれを故意に封印された可能性は否めない。
ピンポイントの記憶じゃなく、過去を全て封印するなんて、一般的な深層催眠ではできないのかもしれない。
だけど目の前で見た品川のあの挙動を持ってすれば、あながち大外れでもない気がする。
催眠術というより、妖術に近いんじゃないのかと思えるほど、あいつの月城を操るような瞳が、口調が、うす気味悪かった。
いじめにあっていたから思い出すな、だのなんだのそれらしい嘘の理由をつけて恐怖を植え付け、月城を過去の記憶から故意に遠ざけてもいた。
でも月城はあいつから離れ、記憶に触れたら、わりとするするとそれを取り戻した。日記をつけていた事は僥倖だった。
ともあれこの事は、月城には伝えずにいよう。
今さら伝えたところで、彼女の十二年間がかえってくるわけでもないどころか、叔父さんにそこまでされていたんだ……と、よけいに苦しめるだけだ。
第一、真偽も定かではない。ただの仮説の域を出ない。
ただこれからは絶対にあいつを……月城を、品川には近づけない。
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