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ダウンを着ていたおかげで上半身はそこまで濡れていない。
ダウンは拭いて吊るす。
乾いた服に着替えてしまえば、寒くはない。この間の真冬より今日はずっと温度が高い。それにしても、月城が大量のバスタオルを用意してくれていたおかげで助かった。
この間俺たちがここに来た後に、人が入った形跡があるかどうか見てまわる。どこもかしこも埃が積もっているから、新しく触れた場所はすぐにわかる。
月城が引っ越して行方がしれなくなってから、人が入っているに違いない。よく見れば、明らかに最近触れただろう箇所が見て取れる。
品川は、月城に実家の存在を知らせないばかりか庭木の手入れもせず、そしてたとえば、金庫部分が開かないからといって、タンスをそのまま運び出すような大掛かりなことはしていない。
〝していない〟じゃなくて、できないんじゃないだろうか。
月城の父親と品川は、そこまで仲が良い兄弟ではなかった可能性が高い。
時間のかかる目立つ作業をしていれば隣近所の目にとまる。この家の主人の弟だとわかれば、近所の人はあれこれ聞くだろう。
月城の一家に何があったのかを。月城家の子供達が生きているのなら、今、どうしているのかを。
それは面倒だ。
きっと品川はそう結論づけた。
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