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連続で入るラインメッセージの一部が、画面の上に浮き出て読めてしまう。
スマホを手に呆然とするわたしに、村上くんが、聞いたことのないような低い声で問う。
「連絡とってんだ、品川洋太と。しかも毎日?」
「違うよ。連絡じゃなくて説得。叔父さんじゃ全然話にならないから、洋ちゃんを説得してCanalsの買収を踏みとどまってもらおうと……」
「へえ、洋ちゃん、ねえ」
村上くんがわたしとの距離を詰めてくる。その瞳の光があまりに強くて、しゃがんでいる状態で一歩後ずさる。
おかしな体勢になり、わたしは尻餅をついた。
「それでも連絡は取るなよ」
「だってどうにかCanalsの買収を思いとどまってもらわないと。わたしのせいでこうなってるんだもん」
「別にそうじゃないだろ? 月城は利用されてるだけなんだ。洋太が品川と繋がってて、月城の話が筒抜けだったらどうするんだ?」
「洋ちゃんは言わないでって頼んだことは内緒にしてくれるはずだよ」
「へえ、よくよく信用してんだな、お前、洋ちゃんのこと」
〝洋ちゃん〟の言い方が皮肉っぽい。
村上くんは、相当に感情が激してくると、わたしの呼び方が〝お前〟に変わる。
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