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「えっ……」
「あんな奴より俺の方がよっぽどお前のことが好きだ。小学校五年から卒業してクラス会に出てこなくなった中二の頃まで……。俺の最初の恋はお前だった」
驚きすぎて、声が喉に張り付く。その間にもわたしの手首を掴む村上くんの力は、どんどん増していった。
「スタバで再会して、Canalsに入社して。二十六になったお前を前に、気持ちは募る一方なんだよ」
たぶん、わたし……身体の機能がおかしくなっている。
頭上が大きく開け、世界が果てしなく広がったような浮遊感に溺れそうになる。
現実のことだとは思えない。
感情が、雫になって両の眼から溢れ出て止まらない。
その一方で、目の前の人に向かう気持ちが強ければ強いほど、冷静になっていく自分もいるのだ。
村上くんを、わたしの事情に巻き込んではいけない。不幸の源のようなわたしに、会社とは別のところで絶対に関わらせてはいけない。
わたしが声を出せるようになるまでに、ずいぶん長い時間がかかったような気がする。
「か……勘違いだよ」
「勘違い?」
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