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叩きつけるようにわたしは床に向かって言い放った。
と、同時に、下のリビングからガラスが割れたような大音響が轟いた。
おそらく、どこかのガラスが本当に割れたのだ。手入れをしていない庭木は茂り、リビングのガラス窓に大枝が接触もしている。
「……見てくる。月城、ここの書類、入れちゃえよ」
さっきまでの強気が失せた、悲哀さえ感じる調子で呟く。
わたしが返事をする前に村上くんは立ち上がった。
部屋から出ていくその背中を見送るわたしの頬には、また新しい涙が伝った。
「なんでこんなことに……」
混乱を極めたまま、それでも時間が無限にあるわけじゃない事は理解していて、両手は書類を片っ端からトートバッグに詰め込む作業を機械的に続けている。
村上くんに伝えたことは、実は半分は本当の気持ちなのだ。
わたしを好きだなんて、単なる思い込みじゃないのか。
クラスのリーダー的存在でありながら、優しい人だった。
小学校時代、ふざけてわたしから走って逃げていても、ちょっと転んだふりでもすればすぐに戻ってくる。
何度同じ手を使っても、ちゃんとわたしのところに来てくれる。
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