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わたしが初恋の相手だと思ってくれているのなら、救済欲求から恋愛感情だと錯覚してもおかしくはない。
「へへ……。両想いだったんじゃない」
今はともかく、小学校時代は、わたしと村上くんは本当に両想いだったのだ。
苦労して用意したのに渡せなかった卒業間際のバレンタインの記憶は苦い。
わたしは荷物の入ったトートバッグをそのままにして、両親の部屋から廊下に出た。
村上くんはまだ戻ってこない。
下からは大雨が降り込んでいるような、さっきまではなかったようなものすごい音が響いてくる。
リビングは水浸しかもしれない。でも、意識が、そういう方向からかけ離れた場所にある。
わたしは自分の部屋に入り、しゃがんで、机の一番下の抽斗を開ける。
そこには、ラッピングされたままの手作りのチョコレートが、十四年の時を経てそのまま残っていた。
小学校六年、卒業間近のバレンタインにわたしはこれを作り、でも当日、渡すことができなかった。
お菓子作りなんてやったことがなく、不恰好もいいところになってしまったチョコレート。
他の子が作った可愛いチョコに気後れしてしまったこともあるけれど、一番の原因は勇気がなかったことだ。
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