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そっとラッピングを開いてみる。すでに白い粉状のブルームがチョコ全体を不均等に覆っている。
ハートマークの中に健司と入れたローマ字も、もう一部分しか読めない。
一緒に渡す予定で手紙も書いたはずだ。
「この頃に戻れたら……」
チョコに触ったら、真ん中からパッキリ割れた。
白い粉を散らしながらフローリングにこぼれ落ちたチョコを拾おうとしたその時、背後から伸びてきた腕がそれを素早くさらってしまった。
わたしは驚き、振り返る。そこには村上くんがわたしと同じようにしゃがんでいたのだ。
大嵐で、村上くんが階段を上る音も、ドアを開けた音も聞こえなかった。意識がこのチョコに集中していた。
「こ、これは、その……同じ名前の人がいて」
「名前なんて読めないだろ。めちゃくちゃ時間が経ってる」
そうか、いや墓穴を掘ったのか。
でもそれなら何もわからないと、ほっとしたのも束の間、村上くんはまだ引き出しの中に入っていた手紙に手を伸ばした。
その手紙の宛名には、はっきりと〝村上健司さま〟と書いてあるのだ。
「だめっ」
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