◇◇月城一颯◇◇ 感極

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「乱暴すぎるよな。謝んないけどな」 言葉を奪われたわたしは、ただ黙って頷いた。涙が床に散る。 わたしの頬を撫でる親指の腹は、大きく震えている。 さっきあんなに情熱的なキスをした人のものと、同じだとはとても思えない。 自惚(うぬぼ)れなのか、恋心が満ち溢れている、知りうる限りで一番優しい指の動きだ。 「後悔、してんの?」 「後悔したいよ。でも、わたしももう我慢が効かない」  そこで村上くんはようやく表情を緩ませ、両方の口角が引き上がる。 大雨の中、大型車のヘッドライトの滲んだ光が一瞬部屋に鋭く差し込んだ。 目の前で、天使と悪魔の混血児が白い歯を見せて蠱惑的(こわくてき)に微笑んでいる。 その妖艶な瞳にわたしは絡め取られる。 「行こう、一颯」 「うん」  どこに連れて行かれるのかわかっている。 でももうわたしの中に理性は、砂つぶほども残っていなかった。 わたし達は手を固く握りしめ合う。
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