◇◇月城一颯◇◇ 感極

19/20
前へ
/387ページ
次へ
拗ねた口ぶりをするとまたわたしを抱きしめる。 今度はセーターがめくりあげられ、あっという間に首から抜かれる。 気づけば協力する体制を作っていたわたしもどうかと思う。 村上くんはほぼ片手で自分のセーターと肌着を、一緒くたにして首から抜き取った。 服を脱ぎながら、競るように抱き合い、わたしと一緒にベッドにもつれ込んだ。  なんだか安っぽい映画のワンシーンみたいで笑いが漏れる。 「なんで笑うんだよ」 「いや……。こういうの、ほんとにあるんだな、って」 「俺だって初めてだよ。こんなの」 喋る間も彼の手は止まらずに動いている。 すでに彼は上裸で、筋肉だけの硬い胸板が目の前にある。 自分のベルトのバックルを操作しながら、わたしのシャツのボタンを片手で器用に外していく。  ヘッドランプだけが灯る淡い柿色の室内で、わたしは村上健司に抱かれる。 急いたキスが体中に降り注ぐ。 切なさを通り越していっそ哀しみと表裏一体の快感に、強くシーツを握りしめるわたしの手を、彼は自分の背中に誘導した。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1366人が本棚に入れています
本棚に追加