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「ひ……引っかき傷が……できちゃうよ」
「その方がいい」
「そ……う」
「あと、村上でも健司でもなんでもいいから、名前、呼んで。一颯」
「け、健司……」
外も暴風雨。
そしてベッドの上でも、熱帯性の暴風にくるわされる。
獰猛で残酷で……これ以上ないほどに美しい、天使と悪魔の混血児に狩られ、わたしは捕食される。
得も言われぬほどに甘美な夢の中に引きずり込まれていく。
好きだよ、一颯。
めちゃくちゃに好きだ。
もう離せないよ、絶対に離さない。
繰り返される彼の甘い言葉に、わたしの声帯が勝手に反応する。
わたしもだよ健司。好きだ、好きだ、大好きだ……。
うわごとのような本音が、泣き声となって解き放たれてしまう。
それとともに、際限なく押し寄せる甘やかな快感に、身体がうち震える。自分の唇から紡がれたものだとは、とても信じられない嬌声が宙を舞い、恥ずかしくて死にたくなる。
この恋しさがどれほどの罪になっても、もう戻ることはできないんだと、わたしは熱風の中で悟る。
恋しくて、切なくて、くるおしくて、でもこれはやっぱり罪深いことで、わたしはたぶん、最後には長く尾を引く声をあげて鳴いた。
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