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「一颯……」
終わったあと、一颯が、俺に背中を向けて肩を振るわせている。
やっと俺のものになったのに、確かに俺を好きだと言ってくれたのに、なんで背を向けるんだ。
むき出しの肩にそっと手をかける。
「泣いてるの?」
「泣いてないよ……」
「俺、乱暴だった? 一颯、可愛くて、愛おしすぎて、俺夢中で……途中から記憶が曖昧……。なあ、一颯……」
可愛かった。
恋しかった。
理性なんて霧散するほど可愛くて、心臓がちぎれるように痛くて、強く強く一颯を求めた。
無我夢中過ぎて、俺いったい何をしたんだろう、と不安になる。
背を向けられていることに耐えられず、俺はできうる限り丁寧に彼女を反転させる。
一颯は俺の胸の中に深く顔を埋めてきた。
まさか、初めてだった?
あの家にいたんじゃ、恋愛なんてできなかったんだろうか。
「一颯、初めてじゃ……」
「違う。大学生の時につき合ったことはあるから。バレて、すぐ別れさせられたけど」
「……なんて野郎だよ。……じゃ、今でもそいつの事が忘れられない、とか……」
一颯の心に他のやつがいるなんて、考えただけでナイフで胸をズタズタに切り裂かれる感覚がする。
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