◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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 それにしても、こんなタイミングで月城が転職……。 電報堂のSNS広告部門のチーフなんてCanalsが喉から手が出るほど欲しい人材で、俺はそのために髪まで切っている。 でも、電報堂は給料が高くて有名な会社だ。 さすがに月城がもらっていたほどの給料は払えないだろうな。っていうか、どうしてそこを飛び出そうとする? そこまでして副業がしたいのか?  それほど自分の腕に自信があるのか? それならなぜ、次の会社を、副業ができなくなるかもしれないほど忙しい会社を選ぶ?  「月城さん。何を望んで転職を? 人間関係? ブラックだって噂も聞かないし、申し分ない会社でしょうに」  俺の正体を明かすよりも、仕事上の好奇心の方が優って次から次へと疑問を口にしてしまう。 「簡単に言うとやりがいですかね。年収とかはそれほど。だって仕事に人生のかなりの時間を使うんですから、楽しくてやりたいことができる方がいいと思いません?」 「やりがい……それで転職を」 「絶対に入りたいって、狙ってる会社があるんです。若い企業でね。既存のやり方に全く囚われない方法で急成長してる会社なんですよ。他がやってないことをどうしてこういくつも思いつくのかな、ってくらい。調べてみたら、個人の裁量がすごく大きいらしいんです。それだけ個人を尊重してる会社ってことですよね?」
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