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涙が込み上がってくる自分の対処方法がわからない。
好きな女の前で涙を見せたことはなく、今、そういう状況であることに動揺し狼狽する。
これって俺なのか?
「泣・い・て・る!」
ベッドの上の方にずり上がってきた一颯に、頭を抱え込まれる。
その肌の香りとぬくもりに、さらに涙が込み上げ、もう観念した。
「……俺が性急に求めたせいで、一颯が傷ついてるから。俺の気持ちじゃなくて、一颯の気持ちを一番に考えられなかった」
「自分の気持ちに押さえが効かなかったのは、わたしだって同じだよ」
「でも、一颯はこうなったことに、後ろめたさを感じてる」
「……それは……」
嘘をつくのが苦手な一颯は口ごもる。
「大事にする。一颯の大事なものは俺も一緒に大事にするよ。二葉ちゃんも……洋太さんも」
「洋ちゃんも?」
そこで一颯が身じろぎをし、俺の顔を覗いてくる。
泣き顔を見られるなんて耐えられなくて、一颯の肩口に頭を突っ込む。
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