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数時間が経ち、朝日が昇る。暴風雨のあとは、台風一過に似た目の覚めるような青空だった。
俺と一颯は二人で近所のスーパーに買い物に行き、一緒に飯を作る用意をする。
しばらく恋人関係からは離れる事にした。
だから、俺としては今日だけは一颯とデートらしいデートがしたかった。
それも本心だけど、部屋にいて手を出さないのはかなり苦しい。
なのに、男心のわからない一颯は、小学校時代のリベンジをする! と張り切り出した。
ルーから作るカレーだ。
一颯のヘルプとして、彼女の指導のもと、野菜を切りまくる。
市販のルーでは出せない自然な色と圧倒的なスパイスの香りがたちのぼる皿が、ローテーブルに二つ並ぶ。
小学校の調理実習とは全くの別物に、スプーンをくわえたまま一颯に向かって親指を立てて見せる。
店で出されるものと遜色ないくらい美味いカレーを一緒に食べ、一緒に片付けをした。
ミケとチャピはすぐに一颯に懐いた。
お前ら主人をどっちだと思ってんだよ、と愚痴りたくなるほど、一颯にまとわりついて撫でることを要求するミケとチャピだ。
「こいつら、野生を忘れてるな」
「仔猫の時に拾ったんでしょ? 健司の家猫だよ。それにお客さんが好きな猫もいるよ。いつもいる人はその状態が慣れちゃって、必ず構ってくれるわけじゃないじゃない」
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