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「話がしたかったのはあなたです。そうしたら、もう一颯ちゃんとこんな事に……。僕と婚約してる状態で、あの人がすんなりあなたと関係を持つとは考えにくいです。相当強引な手法をとったんじゃないですか? 彼女の気持ちも無視して」
反省しきりの痛いところをつかれ、言い淀む。
「……少なくとも同意のもとだよ。彼女も俺を好きだと言ってくれている」
「冷静に考える余地さえ与えず、むちゃくちゃに揺さぶった結果でしょ? 僕は一緒に暮らしている時だってそんな事はしたことがない。いつだって彼女の気持ちを最優先に考えてきた。今の時点で僕に気持ちがないことはわかっていたから、無理につき合ったりもしていない。親父はそれが気に入らないんですけどね」
これに対しては、返す言葉が見つからない。
この人なりに、一颯を品川から守ってくれていたのか。
しかも自分の気持ちを抑え、一颯を優先している。
「婚約はしてても、一颯ちゃんの気持ちが僕に向かない限り、無理に結婚するような事はしないつもりだったよ。でも君がこんな強引なことをするなら考えを改めるべきかな、って」
「……一颯の気持ちは今、俺にある。無理に手を出したら……俺は何をするかわからない」
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