◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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どこだ、月城にそんなに褒めちぎられるその(うらや)ましい会社は! 「月城さん。どこだか聞いちゃ……ダメですよね? そんな羨ましい……じゃなくて魅力的な会社」 「知ってるかなあ。IT業界でも広告業界でもないし、そこまで大きい会社じゃないんです」 「もし、よかったら。いや、よくなくてもぜひ、ぜひ聞きたいです、どこか」 俺の食い付き具合がおかしかったのか、そこで月城は歯を見せて破顔した。 「面白いですね、村上さん。別に隠す必要ないですけど。村上さんが採用面接のライバルってわけじゃなし。Canalsって会社です。コングロマリット化してきてるように思いますけど、元は家庭教師の派遣会社です」 俺は思わず片手で鼻と口を押さえた。 うちの会社! こんな奇跡って、世の中に存在するのか?  手を離して軽く天を仰ぐ。 脳に一気に血液が駆け上がり、咄嗟に鼻血が出るんじゃないかと慌てての行動かもしれない。言葉を失った。視界の色が鮮明になる。 感激で涙が出てきてしまいそうだった。 この場で立ち上がって「採用!」と叫び出したい衝動を(こら)える。
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