◇◇村上健司◇◇ 悔恨

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 俺はコーヒーを口にする。あまり香りのしないコーヒーだった。 「一颯ちゃんのアルバム類と、小学校の卒アルだけは、丹念に見せてもらいました。クラスメイトの中に、一颯ちゃんの両親を事故で死なせた男と、同姓同名の人物がいると知った。父が目の敵にしているCanalsの副社長の名前と一緒でした。でも僕は、Canalsの副社長と一颯ちゃんの同級生が同一人物じゃないかと結論づけた」 「親の主張よりも自分の推論を信じた?」 「まあそうですね。父は、Canalsの副社長は年齢をごまかしてると主張してるけど、Canalsの副社長が一颯ちゃんの同級生だとすれば、ごまかしてはいない事になる。そっちの方が自然でしょ」 「ですよね」 「このネット社会で人身事故を起こした人物が、急成長してる会社の副社長なんて、当時の同級生とかからすぐにタレ込まれるよ。親父は卒アルなんかに興味はなかったはずだから、一颯ちゃんの同級生に村上健司って人物がいたことは知らない。負い目があって親父に従順な一颯ちゃんだ。丸めこめると思ってたんでしょうね」 洋太は卒アルを見た時に、一颯の両親を無免許運転で死に至らしめた人物と、Canalsの副社長が別人だと自分で気づいた?  親父には一颯と同じように、無免許運転を起こしたのはCanalsの副社長、本人、つまり俺だと教えられていた?  一颯と同じように騙されていたってことか? 
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