◇◇村上健司◇◇ 悔恨

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主犯は品川だ。 一颯が事故にあって家が焼失したと教えられた時、洋太はまだ十五歳だった。 でも一緒に暮らしていたのなら、品川の一颯への強引なやり口を見てきたはずだ。 洋太にも相応の罪があると思っていた。 でも彼は本当に何も知らなかった?  そんな事があるのか? 「いいですよ」  洋太は語り始めた。  記憶を失った一颯が、放心状態の二葉ちゃんと品川家にきた時、品川家もまた大きな問題を抱えていた。 品川の妻であり洋太の母親も、ほぼ、うつ状態に近かったそうだ。 一颯が叔母さんは身体が弱く、伏せりがちだと語っていたけど、そういう事だったのか。  なぜ叔母さんがうつっぽくなったのかは、父親の会社を受け継いだ品川の強引なやり口と、息子の登校拒否のダブルパンチだったんだろうと、洋太は考えている。  そこに、難しい症状の姪が二人舞い込んできた。 しかも品川は、自分の実家とも、一颯の父である実兄とも不仲だった。 品川にとって一颯も二葉ちゃんも今まで会ったこともない姪だったそうだ。 洋太も一颯に会ったのはこの時が初めてらしい。 品川が不仲な兄の子供を引き取ったのは、ひとえに一颯の成績の良さに今後の品川ゼミナールの未来を賭けたからに違いない、と洋太は語る。 あとを継ぐべき息子は登校拒否で、引きこもりがちだ。誰か代役を立てる必要があったところに、記憶を失っている上に賢こそうな子供が現れた。 うまく恩を売れば、最高の手駒にできると考えたんだろう、と。   そして一颯は、洋太の前に現れた。 買収によって業績を伸ばす品川ゼミナールとは裏腹に、壊れかけている品川家を、一颯はせめてもの恩返しに立ち直らせようと、懸命に奮闘し始める。
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