◇◇村上健司◇◇ 悔恨

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自分たち姉妹を引き取ってくれたことに絶大なる感謝と共に、巨大な負い目も感じていたらしい。 不慣れな朝飯作りから家事全般までを、一颯は学校生活の(かたわ)ら担うようになった。 ひとつ上の洋太に対しても、学校に行きたくないなら他の道もある、と親身になって探した。 家族でさえ、不登校という自分の状況をほぼ顧みない中、一颯だけが将来を心配してくれる。 事実上一颯のためだけに洋太は立ち直り、芸能の方向で頑張り始めた。 今までほとんど中学に通うことのなかった不登校児が、普通高校に通い人並みの青春を送ろうと願うには、中三半ばは時期的に遅過ぎた。 けれど洋太は芸能のスクールに合格はし、仕事ももらえるようになる。 数年後には品川家はかなり状況が上向いた。 洋太の母も、家事をかなりやれるまでに回復し、洋太の芸能活動も軌道に乗る。 二葉も少し前向きになり、通信制の高校生になった。 そして一颯は国立大の情報関係の学部に進学した。 洋太にとって、一颯に恋愛感情を抱かない事が、いかに不自然な事かは、なるほど理解できる。
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