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通常時でさえ一颯に二度も恋をしている俺からすれば、洋太の状況で、そうならない確率はゼロ、空中をなんの器具も無しに歩くのと同じくらい不可能な事に思える。
洋太は、父親に対し、もやもやしながらも結局、本心では感謝していることがひとつあった。
一颯が大学を卒業する時に、自分との婚約を紙面に残る形で決めてくれたことだ。
そして一颯がその書面にサインをしてくれたことに、天地がひっくり返るほどの衝撃と喜びを受けたそうだ。
品川は、自分の血を引く洋太に品川ゼミナールを譲りたい。
だけど、高校すら出ていない洋太には、現実的にはあまりに難しい。
育ててもらっているという負い目のせいで、品川に従順で、高度なプログラミング技術を持っている一颯が伴侶であってくれれば、これ以上都合のいいことはない。
当初に品川が思い描いた青写真の通りに事は進んでいく。
このあたりまでは、俺が想像していたものと、それほどの乖離はない。
思っていた以上に、洋太が品川の悪事とは無縁だった事が、意外といえば意外だ。
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