◇◇村上健司◇◇ 悔恨

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驚くのは洋太の主張だ。 〝二人で父の不条理に耐えてきた。締め付けに耐えてきた。自分が一颯を想ったのと同じ想いを、なぜ持ってくれなかったのだろう〟 「弱いながらも、一颯ちゃんを親父から守ろうとしてきた」 「たとえば、どんなところで?」  とにかく品川は自分と一颯を管理したがった。 自分が芸能スクールの一年目、一颯が高校生の頃から、二人は携帯で品川と位置情報を共有することを求められた。 最近はアプリで管理されている。 「じゃあ、一颯がどこにいてもすぐにわかるってことか。引っ越しも」 「今は違います。一颯ちゃんは自分の位置情報をアプリ内で変えている。そういうソフトを自分で作って父の目を長いことかいくぐってきた。僕のスマホにもそのソフトを入れようとしてくれた。でも僕だけでも親父の監視下にいれば、一颯ちゃんがバレた時には不具合だと説明できると思った」 「守る、ってそういうこと? 一颯の盾になってくれてたんだ」 「今回は動きましたよ。父の位置情報アプリを逆手に取って、僕が一颯ちゃんの実家が焼失なんてしてないことを突き止めた。Canalsの応接に行ってから、父の動きをアプリ上で見張ってたら、何度も会社とは無関係の場所に足を運び、長時間とどまっている事を知った。世田谷だ。気になって直接行ってみて……どんなに驚いたか想像つくでしょ?」
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