◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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月城は元気よく立ち上がった。  わざと転んで、俺が戻ってくることだってちゃんと計算済みだろ? でもそれさえ楽しい。  それに、月姫さま、って機嫌取ると、月城はいつもふくれるけど、俺からしてみるとまんざらでまかせでもないんだよ。 サラサラで艶々の髪からいい匂いがして、それが胸を苦しくさせる。月に還ってしまったお姫さまをどこかで連想させるからなんだと思う。 楽しくてたまらないのに、君への切ない感情が尾を引いたまま、場面は唐突に林間学校のキャンプファイヤーに切り替わっている。  たぶん小学校の五年か六年だ。  リズムに合わせて徐々に相手がズレていくフォークダンスで、俺はあと数人で回ってくるサラサラの髪の子に意識が集中してしまう。  月城一颯(つきしろいぶき)だ。 踊っている男子に何か言われたのかケラケラ笑う。 笑顔がめちゃくちゃに可愛い。輝いている。あと二人で俺の番。 どっくんどっくんどっくん、と心臓が皮膚を持ち上げる勢いで脈打っている。破裂しかねないと心配になるが、なぜかその割に頭は冷静だ。 今、月城を笑わせたやつより、もっと面白いことを言ってやる。もっと月城にいい笑顔をさせてやるっ。 おかしな闘志と痛いほどの胸の高鳴りの中で月城の手を取る瞬間が……。
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