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「えっ? どうしたんですか? 村上さん」
「いや……」
俺の部署の採用で、責任者は俺だけど、最終面接は重役も揃ってみんなで決める。
まさか俺がこんな場所で、一存で決めるわけにもいかない。スキルチェックもしていない。
電報堂のSNS広告部門チーフの名刺を見せられ、さらに昔の月城の性格を知っている俺は、こんなところで他人相手に変な背伸びをする人種じゃないと断言できる。
小学生時代は成績だって相当良かったはずだ。だから、ぜひうちに来てくれ! と思えるのだ。採用したいと。
また会おうな、月城。最終面接のその場所で。
その後は君専用のロッカーを用意するよ。最近オフィスを新しくしたから、ロッカーは静脈認証だぞ。
「頑張ってね。その会社も絶対に君を待ってるはずだよ」
「え? そうかな。なんですか、その謎の断言!」
「や、単純にそう思うの」
「ありがとうございます。そうだと嬉しいな」
少しだけ小首を傾げ、ふんわりした笑顔になる。コーヒーを両手で囲うようにして取り上げ、そっと口に含む。
喋り方が昔のまんまなんだよ。
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