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思い出すのは、新入社員も多かった社内での新規事業の説明で、最後にちょっとその話をした時の事だ。
一颯は倒れた。
「きっと小学校であなたが家族旅行で受けた衝撃を友達に話したんでしょう。一颯ちゃんに直接語ったのかもしれない。それを彼女は覚えてて、どうしても白衣観音が見たかった。そのために、妹の二葉ちゃんとサービスエリアで席を交代した。見やすい位置にね」
「……」
確かにあまりの衝撃に興奮し、小学校で友達に白衣観音の話をした。
一颯に喋ったのかどうかは覚えていないけど、彼女が聞いていた可能性は高い……かもしれない。
「……一颯たちの一家が事故に遭った場所は……」
洋太が答えたエリアを聞いて、目眩がするようだった。
一颯は二葉ちゃんのうつ病にめちゃくちゃに責任を感じている。
自分が席を替わらなければ二葉ちゃんが重いうつ病にならなかったと思っている。
その根本原因を作ったのは俺……。
目の前のコーヒーカップがぐにゃぐにゃに変形し、木目のテーブルに溶け出していくようだった。
「一颯ちゃんに近づかないでください。一颯ちゃんがそのことを思い出したかどうかはわからないけれど、あなたと一緒にいれば事故の記憶が蘇る。あの時、席を替わってくれと頼んだ自分を責める」
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