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背もたれに身体を預け、石のように固まる。
動くことができない。
俺の存在が、一颯を苦しめる?
一颯は思い出していないだけ?
知ったら一颯は俺を受け入れないかもしれない。
いや、問題はそこじゃない。
倒れた一颯を、医務室に担ぎ込んだ時のことを思い出す。
あの時、彼女はまだ記憶喪失の状態だった。にも関わらず白衣観音の映像に反応して、倒れるまでの心理的ショックを受けたのだ。
事故のフラッシュバック?
「じゃあ、よろしくお願いしますよ、村上健司さん。あなただって苦労した一颯ちゃんに幸せになってもらいたいでしょ? 自分の幸せより一颯ちゃんの幸せを望んでいるんでしょう?」
洋太が伝票を手に立ち上がる。
何も反応できなかった。
だからなのか、洋太はそれ以上言葉を発することなく、しばらくして俺から遠ざかった。
俺のそばにいると、一颯は不幸になるのか?
事故のことを思い出すのか?
それでも俺は自分を優先するのか……?
自分より一颯を優先すると誓ったばかりじゃないか。
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