◇◇村上健司◇◇ 友情

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昨日の土曜日、ヨットは休むと連絡を入れておいた。でも今日、俺はその連絡を忘れたらしい。 昨日、いや、すでに今日だよな?  二十四時間やっているファミレスから、家に戻った覚えがないのにベッドの中にいた。 そこまで寒い季節は過ぎたはずだけれど、俺はこれでもか、と身体に毛布を巻きつけ震えていた。 ヨット不参加の連絡を入れていなかったから、向こうから電話がかかってきて、機械的に頭を下げ続けた。 来週は来るんだろ? という問いにどう答えたのかも覚えていない。 でも明日、会社だけはどうあっても行かなければならない。 月曜日は幹部会議がある。 気づけば日曜日も夜に近い時間になっていた。ゲートのインターフォンからチャイムが鳴った。 「一颯……」 ベッドから飛び起き、転びそうになりながらリビングのインターフォンの場所まで走る。 モニターに映ったのは、長年の友人のナツだった。 ヨットは土日欠席。 さっきの電話の受け答えも明らかにおかしかったはずだ。 俺はマンションエントランスの開錠ボタンを押す。 面倒だから玄関も開けておく。勝手に入ってくるだろう。 一番気を遣わなくてすむ人間だったことがまだありがたい。 ……というか、そういう存在に何もかもをぶちまけなければ、自分ひとりで抱え込めそうにない。 「健司、何があったんだよーーえっ……」
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