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「恋愛ごときで胸がほんとにぎゅーって痛くなるのか? って聞いたら『なる』って即答だったじゃん? しかも小学校のフォークダンスとかいうからたまげたわ。初恋ってそういうもんかあ、みたいな」
「その時の……フォークダンスの相手、なんだよね」
「は? え?」
「いや、その、今回の……」
またごにょごにょと口ごもり、頭に被っている毛布の両側を両手で持って、顔の前でカーテンみたいに閉じる。
「あっ! 待て! 健司さ、中学の最初の頃、めちゃくちゃ小学校の同窓会楽しみにしてた時あったよな? 部活で死んでんのに『服買いに行く、一緒に来て』とか浮かれちゃってそれに付き合わされた」
「……」
「それがフォークダンスの子で、えーと名前が、わりと変わってた。そう!〝いぶき〟だよ。え、で、一颯、ってお前さっきから小声で言ってるよな。え! 待て! 一颯って子、今回のキャリア採用の最終で取ったよな? お前んとこの採用で、やたらプログラミングのできる子!」
「そう、その子さ、品川の姪なんだよ」
そこでナツの顔つきが面白いほどパッキリと変わった。
「フルネーム、なんだっけ?」
「月城一颯」
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