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「うん」
「で?」
「で、って……」
「もっとなんかあるんだろ? 月城さんは引き取られた品川の家で、実家が焼失したなんて虚偽罪にもなりそうな事を信じ込まされてた。そこまで不当な目に遭ってたなら、顧問弁護士と相談して法的な措置をとろう。うちをハッキングされそうになったわけだし、会社に関係がある。で、健司がそんなにボロボロになってる直接の原因はなんだ?」
「……一颯は、品川の息子、品川洋太さんと婚約をさせられてる。司法書士も入れて、法的な誓約書を作ってる」
「なるほどな。それがいったん、別れる、の理由か。月城さんがそれを破棄してくると。個人の意思を尊重してない婚約なんか無効だろ」
「俺も強制的な婚約なんて無効だと思ってた。品川って変な催眠術みたいなのを使うんだよ。けど、あの二人に感情的なつながりがなかったわけじゃない」
「へえ」
「一颯と洋太さんは、品川のきつい監視のもとで共に生活してたらしい。その中で洋太さんの方は一颯に恋愛感情を抱き、一颯は持てなかった。持てなかったけど、恋愛感情とは違う家族みたいな、裏切れない気持ちがあるんだ」
ナツは腰掛けたソファの背に身体を預け、腕組みをした。
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