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「お前に真剣恋愛のイロハを語られるって不思議だな」
「たぶん、強烈な恋心の衝動性を知ってるのは健司より俺だよ。あの頃の自分見てるみたいだもん」
「……そうかも」
大学に入ってすぐの、ナツの遅い初恋。
一通りの男女体験をしていた後のそれは、大人の麻疹みたいに重くて厄介だった。
「洋太ってやつもお前と同じだよ。洋太が月城さんに何年も何もできなかったのは、彼女にその気がなかったからだ。でも健司には、こうやって致命傷になるほどの情報を叩きつけてくる。取られたくないからだろ」
俺は俯いて毛布を握りしめた。
もう今は一颯の幸せを一番に考えたい。
自分がどんなに辛くても苦しんでも、一颯に幸せになってほしい。
一颯は苦労したんだ。これからは誰よりも幸せになってほしい。
……でも、なんでその手助けをするのが俺じゃダメなんだよ。こんな運命の悪戯ってあるかよ。
「決めるのはお前じゃなくて月城さんだよ」
「……ナツ。アメリカの仕事、軌道に乗せるのにロサンゼルスに支社作るって話、出てたよな? お前、行けないだろ?」
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