◇◇村上健司◇◇ 邂逅

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そもそも俺の存在をまるで認識していないように見える。もしかして? と、頭の隅にも浮かんでいないらしい。 そう考え始め、それこそ今さらだけれど、村上健司、とフルネームを名乗って反応を伺ってみたりした。 ちょうどその時に、月城と目が合っていたけれど、その瞳にほんのかすかな動揺も疑念も浮かばなかった。 落ちる。マジで落ちる。 俺は明らかに急速に沈んでいき、月城に「どうかしましたか?」と心配される始末だった。 それなりに仲がいいと、俺は自惚(うぬぼ)れていたのか? それとも人違い?  いや、絶対にこの子は小学校時代の一時期を一緒に過ごした初恋の相手、月城一颯(つきしろいぶき)に間違いない。 最後の最後、二人でスタバの外に出て、駅に向かう月城と逆方向に帰る俺は、別れる瞬間になってようやく気持ちを固めた。 「あのさ。もしかして月城さんって西越小学校だったんじゃない?」  一瞬、月城はきょとんとしたように見える。 数秒、間を置いてから「うん、そうですね……」となんだか歯切れの悪い返答をした。
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