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泥沼に咲き、どっぷりと泥をかぶって泥まみれになった蓮の花。
それでも雨で洗い流されれば、その色に染まることのない純白の蓮が現れる。
あの頃よりもずっと強く、でもあの頃と変わらない優しさやしなやかに、どうしようもなく惹かれるのだ。
だからこそ幸せになってほしい。
なのに、一颯は俺といれば、いつまでたっても両親を失った事故と切り離された未来を歩く事ができない。
俺はこの世で、一番一颯にふさわしくない人間だ。
次の日の幹部会議でうちうちにだけれど、アメリカには俺が支社長として行くことがほぼ決まった。
一颯を連れて行きたかったな、と思う。
一颯が望んでいる二葉ちゃんの療養プログラムはアメリカで、確か西海岸だった。
ロサンゼルスから通えない距離でもないかもしれない。
大阪出張で今週は不在の一颯がいつも使うデスクを眺め、気づけば深いため息をついている。
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