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でも、わたしは自分がどれほど強い想いを健司に抱いているのか、この一週間あまりで悟ってしまっている。
他人のように振る舞われるのはとても寂しい。
だから洋ちゃんには、「婚約を解消したい」となりふり構わずのラインを送ってしまっている。
洋ちゃんがわたしを想ってくれていると知っていたから、今までは切り出せなかった。
健司の近くにいたい。
婚約は解消し、一刻も早く制約のない状態でつき合いたい。
想いが募る一方なのはわたしだけ?
ガラス張りの副社長室の中で、秘書の浅見さんと談笑する健司から視線をそっと外す。
初恋の相手だというだけでつい盛り上がった。
でも冷静に考えてみて、面倒な過去は持っているわ、うつ病の妹はいるわ、そして肝心の本人にもそこまでの魅力を今は感じない。
まさか、そう思っている?
だめだ。
健司の態度ひとつで果てしなくネガティブになってしまう自分が情けない。
健司に声をかけられたのは、出張から戻って三週間後、帰りのオフィスビルゲートを出たところだった。
「月城さん」
オフィスの外で、周りにCanalsの社員はいない。
なのにこんな他人行儀な呼び方をされると、胸を槍で突かれた感覚がする。
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