◇◇月城一颯◇◇ 捨身

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「はい」 「この間送ってくれた書類、全部精査したんだ。で、東欧塾の人間に会ってきた。まず、うちは品川ゼミナールに買収されることはない、と話した。それから簡単な報告書を作って、品川ゼミナールの品川にどんな背景があるのか説明した。で、内密に意向を聞いた」 「意向?」 「そう。これから品川ゼミナールとどんな提携を結ぶつもりか? ってね」 「そしたら?」 「品川ゼミナールとの提携は社での協議の結果、白紙に戻ったって言われたよ」 「それって、実際はその場で即決ってことじゃないの? 東欧塾の誰に会ったの?」 「社長」 「あれほどの規模の会社の社長がすぐに会ってくれたんだ?」 「な。びっくりしたよ」  笑顔が吹き抜けのエントランスの照明に弾けるようで、またしても胸が苦しくなる。  東欧塾は国内最大手のひとつだ。 そこの社長が格下の会社の副社長に会う。 健司は何か策を講じて出てくるように仕向けたんだろう。
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