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「あとな。明日の終業後、できるだけ人が引けた後がいいから午後十時にしたんだけど、顧問弁護士と社長と俺、あと月城で四十二階の応接で今後の話をしたい。月城の意思にできるだけ沿った形で、品川に対しての法的な措置の方向性をまとめる」
「そんな……。わたしのために顧問弁護士なんて」
「一時期、Canalsは月城のハッキングに脅かされた。背景にはひどい操られ方をしてた月城の事情があって、今その女性はうちの大事な戦力だ。ご両親の遺言書まで託してくれてありがとう」
「ううん。こちらこそ……、一社員のためにありがとうございます」
「あと、これなんだけど。明日までに目を通しておいてもらえる?」
健司はA4サイズの封筒を差し出してきた。
「何?」
「生命保険でかなりの額が月城と二葉ちゃんには入る。だけど二葉ちゃんのうつ病を治す療養プログラムは高額だ。試算したんだ。できるだけ、品川から慰謝料を取った方がいいだろうと。十二年もの間、君の人生を奪ってきたんだ。でも月城は、それでも育ててもらった恩だとか、洋太さんのことだとかを考えちゃって多額の請求は控えそうだから。それだけあれば二葉ちゃんにプログラムを受けさせられるよ、って。考えてみてほしい」
「……はい」
健司は何かを言い淀むように、何度か唇を開きかける。
「何?」
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