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「ありがとうございます。でもまあ、超クールとか面白いとか言って、若手のテンションは爆上がってますけどね」
「そっか。それは良かった」
「まあ、年齢的にうちは幹部が若手ですから」
俺は浅見さんが部屋から出ていくと扉を閉めた。
開けておいても、開いた扉にぶつかる社員が多い。まあそのうちみんな慣れるだろう。
デスク前の椅子に腰掛け直した俺は、PCのキャリア採用データを開く。
「やっぱ、あったか」
月城一颯。
十四年前に教室という同じ空間を共有し、そして二週間前にスタバで俺にとってだけの再会を果たした女性、まごうことなき月城一颯その人が、最終面接まで残ったエントリーシート上に鎮座していた。
俺の中で、小学校の教室が、校庭が、体育館が、雨上がりの梔子のような甘く湿った芳香を放っているのは、確かにそこにその少女がいたからだ。
PC上の一枚のエントリーシートを前に、机に肘をついて額を覆い、深いため息をついた。
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