◇◇村上健司◇◇ 邂逅2◇

8/24

305人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
「なんか今日あるのか? なんでそんな超高級なスーツ着てんだ? 女か?」  ああ……、どうしてこうもナツは服やアクセサリー類にはめざといんだ。 スーツなんてどれも似たようなものだろうに、育ちのいいおぼっちゃまには、上質なものとそうでないものは一目瞭然らしい。 「どうして会社で女って発想になるんだよ。気合いだよ! 浅見さんに、髪も切ってこい、できる上司をアピールしろ、って釘刺されたんだよ」 「じゃ、この面接のためか? 女じゃなくて!」 「もうー。お前は俺をなんだと思ってんだよ! 今を時めくCanalsの取締役副社長だぞ。俺の部署の最終採用面接なの!」 「やっぱり女だな」  そうじゃないと言っているのに、勝手に納得し、ナツは俺を追い抜いて多目的ルームのドアノブを押し開いた。  やっぱり女か……。 月城が最終まで残り、今日ここでまた会うと確信していなかったら、このスーツがお目見えすることはなかっただろう。 最終面接に残ったのは六人。男性が四人に女性が二人。 そのうちのひとりが、今日は黒いスーツに身を包んだ月城だった。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!

305人が本棚に入れています
本棚に追加