305人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
「なんか今日あるのか? なんでそんな超高級なスーツ着てんだ? 女か?」
ああ……、どうしてこうもナツは服やアクセサリー類にはめざといんだ。
スーツなんてどれも似たようなものだろうに、育ちのいいおぼっちゃまには、上質なものとそうでないものは一目瞭然らしい。
「どうして会社で女って発想になるんだよ。気合いだよ! 浅見さんに、髪も切ってこい、できる上司をアピールしろ、って釘刺されたんだよ」
「じゃ、この面接のためか? 女じゃなくて!」
「もうー。お前は俺をなんだと思ってんだよ! 今を時めくCanalsの取締役副社長だぞ。俺の部署の最終採用面接なの!」
「やっぱり女だな」
そうじゃないと言っているのに、勝手に納得し、ナツは俺を追い抜いて多目的ルームのドアノブを押し開いた。
やっぱり女か……。
月城が最終まで残り、今日ここでまた会うと確信していなかったら、このスーツがお目見えすることはなかっただろう。
最終面接に残ったのは六人。男性が四人に女性が二人。
そのうちのひとりが、今日は黒いスーツに身を包んだ月城だった。
最初のコメントを投稿しよう!