◇◇村上健司◇◇ 邂逅2◇

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今回の採用は三人だが、一次面接、二次面接、スキルチェックのデータを見た限り、月城が落ちることはないだろう。 コード作成の技術は六人のうちでも一、二を争う。 創業時のメンバーは給料などに今でも優劣をつけていない。 肩書きは社長のナツ、副社長の俺、以下、専務取締役が八人だ。 今日は俺とナツの他に、うちの部署の情報セクターをまとめている専務の枝川が重役面接に臨んでいる。 六人一緒に面接を行う。最終面接は雑談に近かった。 今までしてきた、ためになったり、逆に考えさせられた経験などを話してもらう。 そこで俺は、月城が中学二年の時に両親を家族旅行の交通事故で失い、妹と共に叔父夫婦のもとで育った事を知った。 月城の身にそんなことがあったなんて……あまりの衝撃に言葉が出なくなり、俺はほとんど口を開けなかった。 IT関連の仕事をしていたという叔父の影響で、プログラミングに興味を持ったと、笑顔で話している。けれど。 中学二年。そのあたりから、月城は小学校のクラス会に来なくなった記憶がある。 叔父さんの家が東京じゃなかったんだろうか。でも経歴は全部東京になっていたはずだ。 もしかしたら、叔父さんの家に行ってから苦労……したんだろうか。 エントリーシートを見る限り、きちんと大学まで出ている。国立大の理系だ。
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