◇◇村上健司◇◇ 邂逅2◇

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 そこで電光掲示板を見上げると、隣のチームのスコアは芹沼と麦田がストライクで、月城はスペアを出している。そんなスペックの高いチームの中で、松井さんひとりがガーターだった。 あの舌打ちはそういうわけか。 一投目からこれじゃ先が思いやられる。景品が出るとはいえ、社のイベントは仕事仲間と円滑なコミュニケーションを図るためのツールでしかない。楽しく盛り上がることにのみ意義がある。 しかも松井さんは新卒入社のまだ社会人一年目、ベテランに囲まれて緊張もしているだろう。困った男だ。 どうにも隣のチームが気になり、そっちに意識が逸れる。 芹沼が投球のためにアプローチに出ていく隙に、何を思ったのか月城が松井さんの袖をひき、後ろに連れていく。 その後、麦田のことも手招きしている。投げ方の助言でもしているのか? 芹沼の投球までの時間が長いおかげで女の子二人は結構な間、話――作戦会議――? をすることができたようだ。 芹沼は今回もストライクだった。フォームも完璧だし、もしかしたら本格的な経験者で、本当に優勝を狙っているのかもしれない。 だけど、あんまりひどい態度をとっていたら注意しよう。
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