306人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
そこで電光掲示板を見上げると、隣のチームのスコアは芹沼と麦田がストライクで、月城はスペアを出している。そんなスペックの高いチームの中で、松井さんひとりがガーターだった。
あの舌打ちはそういうわけか。
一投目からこれじゃ先が思いやられる。景品が出るとはいえ、社のイベントは仕事仲間と円滑なコミュニケーションを図るためのツールでしかない。楽しく盛り上がることにのみ意義がある。
しかも松井さんは新卒入社のまだ社会人一年目、ベテランに囲まれて緊張もしているだろう。困った男だ。
どうにも隣のチームが気になり、そっちに意識が逸れる。
芹沼が投球のためにアプローチに出ていく隙に、何を思ったのか月城が松井さんの袖をひき、後ろに連れていく。
その後、麦田のことも手招きしている。投げ方の助言でもしているのか? 芹沼の投球までの時間が長いおかげで女の子二人は結構な間、話――作戦会議――? をすることができたようだ。
芹沼は今回もストライクだった。フォームも完璧だし、もしかしたら本格的な経験者で、本当に優勝を狙っているのかもしれない。
だけど、あんまりひどい態度をとっていたら注意しよう。
最初のコメントを投稿しよう!