◇◇村上健司◇◇ 邂逅2◇

21/24

306人が本棚に入れています
本棚に追加
/261ページ
隣のレーンでは相変わらず月城が、その喜び方はさすがにわざとらしいぞ、と苦笑が漏れるような派手な飛び跳ねっぷりをしている。 俺は自分のチームに注意を払いながらも、横目でそれを確認することはやめられなかったらしい。最終的に俺のチームは二位で月城のチームは三位だった。  変わらないな……。  今日の月城の態度を見ていて、小学生の頃の快活と繊細がいい具合に入り混じった性格を思い出す。誰かが困っていればさりげなく手を差しのべる。 いきすぎた男子の悪ふざけを真っ向から注意する嫌な役目も月城が担っていた。 掃除中に率先して箒で野球、雑巾でサッカーをする俺は、毎度毎度月城に金切り声を上げられていた。 それもお互いどこかで楽しんでいた、なんて思っていたのは、十四年も経ってから自惚(うぬぼ)れだったと判明したわけだけど。 いや、月城は〝変わらない〟じゃない。芹沼みたいな難しい人間の対処能力がめざましく上がっている。 それは松井さんのような立場の弱い人間に対する優しさだ。 月城は優しい。そこは昔から変わらない。
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!

306人が本棚に入れています
本棚に追加