◇◇村上健司◇◇ 邂逅2◇

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それを思いとどまったのか、ふっと瞳から力が抜け、柔らかい表情になって俺にかすかに頭を下げた。 ここまではっきり目が合ったのに、何もしないのが不自然だと判断したのだろうか。  俺もごくわずかに首を曲げてこれに応えた。  月城と目が合ったのに、そこにときめきはなかった。なぜなら、月城の視線があまりにも強く冷たかったからだ。なんの感情が乗ってあそこまで厳しい眼差(まなざ)しになったのだろう。  月城らしくない。 少なくとも、今日、松井さんを気遣った時に見せたような、昔から俺が知る月城の瞳ではなかった。 その後の居酒屋では俺が音頭をとって乾杯し、新しく入ってくれた月城と赤堀さんの紹介をする。 会はつつがなく進行し、一次会は九時には終わりになった。行きたい者だけが二次会参加になるわけだけれど、なぜかうちの部署はほとんどがそこまでくる。 今時の若者は社の飲みの席が苦痛だと報道されている。 コンプライアンスもあって強要はしていないにもかかわらず、勝手に盛り上がって二次会までが常時設定されている。敬遠されるべき上司(しかも副社長)の俺にまで半強制のお誘いがかかる。 「副社長! 今日はもちろんオールっすよね?」  と、遊びの場ではまだ学生気分バリバリの、酔っ払った入社一、二年目の社員にせがまれ、腕を引っ張られる。 若手の多いベンチャー企業はこんなものなのかもしれないけれど、実際「俺、懐かれてるじゃーん!」と気分が良くなり、ついつい若手に付き合ってしまうのだ。
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